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旅とは、相手のことを知ること 松下 照美 | ケニア【前編】

ケニアのビール「TUSKER」を片手に人生という旅を語ってくれる尼さんルックスのケニア在住ゴッドばあちゃん。御歳67歳、アフリカ在住歴20年弱。小さな体には似合わない壮絶な人生にどの世代も圧倒され、彼女の生き方に惹かれる。

1945年生まれ 女性
職業:ケニア政府NGO モヨ・チルドレン・センター 代表
初一人旅時期: 1994年 当時49歳
行き先: モンゴル・ウガンダ

初めての海外一人旅は、49歳の時。大切なパートナーの遺骨を、彼のイメージにぴったりなモンゴルの草原が広がる1本の大きな木の下に埋めてあげたいという思いから。その日までは海外とは無縁だった照美さんは今、日本から遠く離れたケニアで、ストリートで出会った子どもたちと生活を共にし、マダム・テルミと敬愛される存在です。彼女の旅のストーリーは、地域を旅することに留まらず、生きること・人生に必要なもの をシンプルに考えさせられる内容でした。

海外に行きたいと思ったことなかった。

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-今は20年近くアフリカに住まれているということですが

今となってはね。昔は海外に行きたいと思ったことすらなかったの。いわゆる遺跡とかにほとんど興味がなかったの。

-そうなんですね。

30年近く前かしら、旅を意識することになったのは。私は当時徳島の五剣山という山の上に住んでいたんだけど、いとこがデンマークのコペンハーゲンにいたり、山奥だけどなぜか外国人の出入りもある環境だったの。そんな時にある方から旅について聞かれたんだよね。外国に結構いっていらっしゃる方で、松下さんはどうして旅をされないんですか、って。いやー、あんまり行きたいと思ったことがないので…と答えたんだけど、その時に初めて旅というものを意識したんです。

-それまでは旅に出ること自体意識してなかったのですね。

旅というなら私の旅は、山の麓まで買い物に行くときとか。片道1時間くらいかけて行くんだけど、そこに無限の旅があるっていうか。どうやら私はそういうものを旅として捉えていたようなんですね。

-生活の中で旅をしていたのですね。

その山の麓への道で、日々違うものがあるわけ。同じ道の中を行くのだけれど、季節によって景色が変わるし、出てくる動物は毎日違うしね。そういうものを私は旅と捉えていたの。

もうひとつは、人生そのものが旅という風に言えるのかなと思って。冒険家の星野道夫さん『長い旅の途上』っていう本があってね。そこにも書いてあるんだけれど、具体的な旅ではなく、「人生を旅と捉える」という意識が、私の中にあったんじゃないかと思うの。

まずは自分の感性で受け止める

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-人によって旅の定義はそれぞれですね。

結婚してパートナーと一緒になって、もちろん一番大切なことは共有するのだけれど……。お互いがそれぞれの感性で一旦受け止め、整理してから、相手に伝えるっていうのが私たちのやり方だったの。

-それぞれの感性で?

例えば、コンサートや映画に行くときも、あえて別々に座ったりね。隣り合わせでない席をとってそれぞれで楽しんで、後でお互いが、自分で受け止めてきた感想を共有する。いつも大切なことは、まず自分の感性で受け止めるってこと。そんなことをしていたから、私は旅も一人でするものだとぼんやり思っていたのね。

-一人で受け止める時間が大切なんですね。

人の生活のありように触れる旅

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結局私は旅に出るようになったんだけれど、旅の場合は特にまず自分の感性で受け止めることを大切にしているの。私は、旅を「旅人型」と「生活型」の2つのパターンに分けています。私は後者で、人の生活のありように触れる旅をするタイプ。

-はじめての一人旅も「生活型」ですか?

そう。モンゴルへ行こうとアフリカへ行こうと、ある地域に定着してしまう、そこの住人になろうとしてしまう「生活型」なんです。一番興味があるのは、そこに住む人々の生活。現地の人と触れ合いたいし、数日の生活であれ、観光地を動くのではなく、現地の生活に、どっぷりと浸るの。

私はどちらかというと「生活型」の旅が好きです。

-人それぞれのタイプがある気がしますよね。

旅に出て「違い」より「同じ」を感じる

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-「生活型」は人と関わる機会が多いと思いますが、文化の違いを感じたりしますか?

基本的に私は、「違い」よりも、「同じ」を感じるなと思います。

-人の根本的な部分は変わらないということでしょうか?

そう。だから初めての地域でも、違和感なく入っていけちゃう。よく見れば、もちろん違いもいっぱいあるんだろうけれど、相手も人間だし、私も人間。違いというよりも、共通の部分をたくさん持った人としてまず接しようとしているというか。

その地域に住めば、今私がアフリカで住んでいるようにいろんな違いも見えてくるけれどね。それでも根本的な違いではないっていう気がするの。

-旅のスタイルを聞いて、それが照美さんの生き方なんだと感じました。

それともう1つ、やっぱり私は人生を旅として捉えていると思うの。生まれた時から、人はみんな死に向かっていく。私は死というものを「故郷に帰る」と捉えていて、生まれてから死ぬまでが根本的な一番大きな人の旅と思っています。

生まれてからいろんな人に出会い、結婚をし、アフリカに出会い、死に至る「故郷に帰る」。故郷に帰るとそこには、私の両親もいるし、パートナーもいるし、残念ながら命を落としてしまった私の知っているストリートの子ども達もいる。誰もが年齢はどうであれ、行きつく先なのが故郷。

-アフリカへ行くことも旅とは言えるけれど、照美さんにとっては人生という大きな意味での旅の、過程なんですね。

そう。だから旅と聞くと、私はまだまだ旅の途上にいると思っているんです。

-すごく大きな視点ですね

(後編へ続く)

 

※後編は9月7日(月)に公開予定です。

 

(インタビュアー:梅村 恵)

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■松下 照美(Terumi Matsushita)

ルート: モンゴル→ウガンダ
期間: 3カ月(モンゴル:1カ月・ウガンダ:2カ月)
費用: -
航空会社: -

 

転載元:Travelers Box

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